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巌佐庸学会長から, 第8回国際生態学会(ソウル)の報告とあわせて, 東アジア生態学会ネットワークの設立ついて意見を募る文書が寄せられました. ご意見のある方は,文末の宛て先までお願いします. (27 August 2002) |
2002.8.24
今回の第8回国際生態学会議 (INTECOL) は8月11日から17日までソウルの中心, COEXセンターというビルで開かれました.
参加者は登録者数で1390名でしたので,通常の INTECOL よりも少し小さめだった ようですが,会場が快適でソウルの気候も涼しかったことで参加者が楽しめた会に なったと思います.
最大の問題は,プレナリーなどで招待を受けた人を除いてはアメリカおよび ヨーロッパの生態学者の参加者が少なかったことです.それはヨーロッパの 生態学会やアメリカ生態学会の大会がちょうど重なるような日程に設定されていた ことが原因でした.
韓国の組織委員会は日本の生態学者の参加を何度も要請され,仙台の大会にも プロモーションに見えた熱意のおかげで,日本からは300名を越える参加者が ありました.昨年の10月に,日本の生態学者から30程度の数のシンポジウム セッションを提案してほしいと言われたときには,私は「できるだけ努力するが, そんなに多数は無理で提案できる数は約束できない」と返答しました. しかしふたをあけてみると,40に迫る数で,全部で70前後のシンポジウム セッションのうち半数以上で日本人が企画者になっていました.
プレナリーには日本生態学会から推薦した椿宜高さんと,INTECOLの前会長である 宮脇昭先生が講演されましたが,椿さんの過去15年以上にわたる一連の研究を まとめた話も,宮脇先生の森林植生復元のエネルギッシュな講演も,ともに 印象に残る発表であったと思います.
また日本の大学院生のポスターや論文発表にはとてもすぐれたものがあり 感心したといろいろな人から言われました.
全体として会議そのものが,また日本生態学会の協力なしにはこのように 成功できなかったと何人もから感謝されました.また同時に,日本の生態学者の 力を世界に示せた会議であったと思います.
今回の国際生態学会議の内容は,環境問題の解決という側面に重点が置かれて いました.それは開会式で金大中大統領の挨拶ビデオや環境大臣の挨拶を 聞いていても,生態学は環境科学だという捉え方のようでした.最終日に 韓国の生態学の歴史をまとめた講演がありました.韓国生態学会は比較的歴史が 新しく,会員数を急激に伸ばしているところです.今世紀はじめからの研究動向が 説明され,すぐれた生態学研究の例が紹介され,重点的に進められている分野を 論文数をデータとして示し,分かりやすい分析がなされました.最後に, 今の韓国生態学に抜けている分野や問題点などもまとめられていて, 私はとても感心しました.このような講演では,自分の国の研究のよいところしか 言えないものですから.
全体として,韓国の生態学にくらべると日本の生態学は基礎や進化に重点が 置かれていることがよく分りました.たしかにアメリカでは進化生物学として 生態学とは別に研究されている分野も日本生態学会では盛んです.このように 他国の学会の様子をみると日本の生態学の特色がよくわかります.また韓国では 学位を取得した若手研究者がアメリカやヨーロッパなどに留学することもあり, 日本よりも国際的になっている面があると思います.日本と韓国の生態学には いろいろと相補的な面があり,これからの交流は両者にとってプラスになると 思います.
大会2日目の夜に,韓国の提案で,日本,中国,韓国の会長および幹事長の 話し合いがもたれました.アジア諸国の生態学会の組織をつくって研究交流が できるようにしようということでした.その意義については,3国とも賛成でした.
韓国は,Asian Ecological Society とか Asian Ecological Organization などと いう名前にしたかったようですが,それでは組織として硬すぎてやりにくいという 中国の意見をいれて,とりあえずは East Asian Ecological Societies Network という名前でスタートすることになりました.
また幹事長の中根周歩さんと私とは,内容についてこれらの3国で話し合うことは よいが,スタートするときには東南アジア諸国など他の国の生態学者に対して 門戸を開くようにすべきだということ,それから範囲については,将来はできたら ロシアからオーストラリアなどを含めた Asia-Pacific にする方が望ましいと 述べました.しかし,生態学者の組織がない諸国では,代表として生態学者を よんでも他の人たち伝わらないということもあり,最初の相談の段階では3つの国で スタートしたいという議論になりました.
活動については,2年もしくは3年ごとに共同開催の学会を開くということです. 将来は共同研究や若手援助など,もっといろいろなことができるかもしれません. しかし最初は100名か200名程度の参加者数でもよいので,とりあえずは小さな スケールから第1歩をスタートさせようという話でした.そのとき私達が考えたのは, 日本で開く番になったときには,独立して開くよりも,日本生態学会の大会に くっつけた形で開催することです(植物学会などはそうしているようです).
このような詳細については,これから数カ月をかけて,メールを使って3つの国で 相談をし,またそれぞれの国の生態学者の意見も入れて国内の了解をとり, 案を作成することになりました.そして来年2月に,北京で会長および幹事長の 会合を再び持ち,そこで最終確認をする,ということになりました.
そして,このようなプランがスタートしたことを17日の INTECOL の閉会式で 私から報告いたしました.
これから数カ月かけて他国の学会と相談するにあたっては,常任委員会および 全国委員会で議論しながら日本生態学会としての対応を決めていくつもりです.
対応は学会組織が行いますが,日本の生態学者が近隣諸国の生態学者とレギュラー に交流をもつ機会が開ける可能性がありますので,生態学会の,一般の会員の方々, もしくは生態学会の会員でない方にもご意見をうかがい,それらをできるだけ 反映させる形で実現するように進めたいと考えています.
この東アジア生態学会ネットワークの案について,ご意見をお持ちの方は, どのようなものでも結構ですので,巌佐( yiwasscb@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp )もしくは日本生態学会事務局( ecoffice@hiroshima-u.ac.jp )の中根周歩幹事長 あてにメールにてお送りいただけると幸いです.