25-29 Aug 2004

The 51st Annual Meeting of the Ecological Society of Japan (JES51)

Kushiro Tourism and International Relations Center

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Proceeding


JES51 Executive Committee
updated at 16:54 08/10/2006
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[proceedings] 公募シンポジウム S04

8 月 27 日 (金)
  • S4-1: Decline of ultrabasicosaxicolous vegetation from 1954 to 1999 on Mt. Apoi, Hidaka Province, Hokkaodo, Japan (watanabe)
  • S4-2: Vegetation of ultramafic sites at Mt. Apoi and Mt. Horoman, Hokkaido, Japan (Sato)
  • S4-3: Sucsession of plant community on soil of olivine (Masuzawa)
  • S4-4: Population dynamics of Callianthemum miyabeanum (Nishikawa,Miyaki,Ohara,Takada)
  • S4-5: Nature protection of vegetation of Mt. Apoi (Tanaka)

09:30-12:30

S4-1: Decline of ultrabasicosaxicolous vegetation from 1954 to 1999 on Mt. Apoi, Hidaka Province, Hokkaodo, Japan

*sadamoto watanabe1
1Faculity of Geo-environmental Sience, Rissho University

特別天然記念物の指定を契機として,1954年より著者は北大舘脇操教授の指導の下に文化財の定時観測の意味をふくめて,アポイ岳超塩基性岩植物相の調査を主として馬の背登山道から幌満お花畑について機会あるごとに調査を行ってきた(渡邊1961,1970,1971,2002)。調査の過程で常に注目してきたのは超塩基性岩フロラの急速な劣化・衰退であった。それは,人間活動によるフロラの劣化もさることながら,動物散布による遷移の促進といった生態系管理の基本にかかる問題を含んでいた。アポイ岳では,この45年間で高山植物が生育するかんらん岩露出地が大幅にせばまってハイマツ林やキタゴヨウ林に遷移してきている。その遷移の機構は,まず南斜面のお花畑にホシガラスによってキタゴヨウの種子が貯食され,その一部は芽ぶく。15年を経たのちには樹高2.5m程度に達し,チャボヤマハギやエゾススキが侵入して,標高が低いなどの理由から,近い将来,森林に推移することが想定されている(渡邊1994)。急速な温暖化は,このテンポを確実に早めているとみてよい。お花畑の消失は,世界でアポイ岳にしかない固有種のエゾコウゾリナをはじめ,エゾタカネニガナ,アポイクワガタなどの植物を確実に消失させている。貴重種,稀産種の保護には,思い切った対策が必要である。1989年,北海道庁の委嘱を受けて,アポイ岳産主要植物の種ごとの衰退に関する調査と評価を行った。その後,1998年より行われている増沢武弘らの調査に加わり最新のフロラの動向について客観的な評価を行うことができた。この研究は,20紀後半の環境保全問題に焦点をあてる意味から,アポイ岳における超塩基性岩植物相の45年間(1954-1999)の劣化・衰退の現状を明確化するとともに,主要な種について過去50年間の動向について明らかにし,保全対策について提言する。


09:30-12:30

S4-2: Vegetation of ultramafic sites at Mt. Apoi and Mt. Horoman, Hokkaido, Japan

*Ken Sato1
1Faculty of Engineering, Hokkai-Gakuen University

アポイ岳・幌満岳には、固有種を含む希少植物が多く知られ、それらの劣化が指摘されてきた。この点に関して、植生生態学の立場から論考する。
 両山岳の超塩基性岩地に成立する荒原・草原植生について、同じ群落面積に対して調査年を変えてそれぞれ多数の方形区を設定する「偽の永久方形区法Quasi Permanent Quadrat Method」により、植生変化とその主要構成種である希少植物の変化を確認した。アポイ岳では、大場(1968)、Ohba(1974)、筆者(1983年と1994年の調査)ならびに中村(1988)による過去の植生資料と、2001~2002年に調査した植生資料を比較し(佐藤2002, 2003b)、幌満岳では、1994年と2001年の植生資料を比較した(佐藤2003a)。
 その結果、アポイ岳では、2001~2002年に量的に少なかった希少植物は1994年以前にもほとんど同様に希少であり、植生と希少植物に明らかな変化が認められなかった。それに対して、幌満岳では、とりわけ固有種ヒダカソウが1994年と2001年の間に優占度が著しく減少し、開花結実個体が量的に激減した。以上の一因として、アポイ岳では1994年以前の古い時代に盗掘が進んでしまい、まったく衆人環視ができない幌満岳では1994年以降でも盗掘が続いたと考えられた。
 植物群落の立地把握によって希少植物の生育地を網羅した結果、例えば岩隙と岩礫地の両者に生育するヒダカソウは両山岳において生育地を違える結果が得られた。この点でも人為要因・盗掘の影響が示唆された。さらに、両山岳の絶滅危惧植物に関する保全策について、群落立地・種の生育地の実態と変化を見る観点から考察したい。


09:30-12:30

S4-3: Sucsession of plant community on soil of olivine

*Takehiro Masuzawa1
1Faculty of science

アポイ岳は基盤が超塩基性岩であるカンラン岩によって構成されている。特に稜線沿いは風化が進んでいないカンラン岩が露出している。この地質学的な条件に加え、夏期には海霧による気温の低下、冬期には海からの西風で積雪が少ないなどの気象条件により、古い時代から稜線に沿って、この環境に適応した高山植物が標高の低い山にもかかわらず残存し、また、隔離されてきたと言われている。
近年、アポイ岳の稜線沿いに成立していた多年生草本植物群落の分布域は、木本植物の進入により急速に減少しつつある(渡辺 1990)。標高の低い位置から上部に分布を広げつつある顕著な木本植物はキタゴヨウ(Pinus parviflora var. pentaphylla)とハイマツ(Pinus pumila)の2種である。ここでは2種の植物の成長速度と樹齢について解析を行うことにより、この2種が、いつ、どの位置に侵入してきたかを推定し、その結果を報告する。樹齢の推定には、キタゴヨウの進入した場所では、遷移の進行の指標として年枝の測定を行った。1年に1節ずつ枝を伸張させるキタゴヨウの特徴を生かし、樹木の先端から年枝のカウントを行うことにより、植物を傷つけることなく樹齢を推定した。
また、それらが今後、いかなる速度で分布を広げ、カンラン岩地に適応した草本植物群落内に侵入していくかについても、推定を行った結果を述べる。さらに、カンラン岩地に特有な植物が生育している土壌の性質についても、原素の化学的分析による結果をもとに報告を行う。


09:30-12:30

S4-4: Population dynamics of Callianthemum miyabeanum

*Yoko Nishikawa1, Masami Miyaki1, Masashi Ohara2, Takenori Takada3
1Hokkaido Institute of Environmental Sciences, 2Graduate School of Environmental Earth Science, Hokkaido University, 3Department of International Cultural Relations, Hokkaido Tokai University

絶滅が危惧されているアポイ岳の固有種ヒダカソウの個体群動態の特性と、盗掘による開花個体の減少が個体群の生育段階構造にもたらす影響について検討する。比較的盗掘の影響が少ないと考えられる生育地の合計3.2m2区域内で、根出葉と花の数による生育段階の個体センサスを3年間行った。センサスした個体は1年目が303個体で、3年目には主として生育段階が根出葉1枚の個体数の減少によって278個体になった。全個体数の約90%を占める根出葉1枚および2枚の個体は、それぞれ平均約65%が翌年も同じ生育段階を維持し、根出葉を増やしてより大きい生育段階へ移行した個体は、平均約20%及び10%であった。開花個体の割合は1%未満であり、開花した翌年は花をつけなかった。新規参入個体は2002年に31個体、2003年には17個体と少なく、死亡個体数を下回っていた。また、ヒダカソウの主要な個体群間で生育段階構造は大きく異なった。登山道沿いの個体群では、開花個体を含むサイズの大きい個体が極端に少ない傾向がみられ、開花個体が全くみられない集団も存在した。盗掘等による開花個体の減少が続けば、新たな個体の参入が減少し、個体群の維持が難しくなると考えられる。


09:30-12:30

S4-5: Nature protection of vegetation of Mt. Apoi

*Masato Tanaka1
1Visiter center of Mt. Apoi in Samani Town

 アポイ岳(標高810.6m)は、日高様似郡冬島の海岸線から4kmの距離に位置し、幌満川をはさんで東の幌満岳(685.4m)と対峙している。アポイ岳の頂上から北方へ尾根をたどると、吉田山(825.1m)やピンネシリ(958.2m)をへて日高山脈の南部に至る。
 これらのアポイ岳、吉田岳、ピンネシリをまとめてアポイ山塊というが、この山塊は、幌満岳とともに、中生代ジュラ紀(1億5千万年前)に始まり新生代第三紀末(約150万年前)まで続いたといわれる日高造山運動によって形成され、その主要な岩石はダンカンラン岩、カンラン岩、斜長石カンラン岩などの超塩基性岩で、幌満カンラン岩または幌満超塩基岩体といわれている。岩体の主体はダンカンラン岩であるが、長期間の風化にもかかわらず蛇紋岩化された程度は低く、山塊の尾根や斜面に露出している。
 このような地形や地質が特徴づけられる低山の尾根部分が、1)夏期に海霧の影響を受け気温が低下し、2)冬期は海からの風(西風)で積雪が減少する位置にあること、3)日高山脈などとともに第三紀を通じて陸地であったこと、4)山塊が超塩基性岩でなりたっていることなどが、古い時代からの植物を残存させ、隔離・保護・進化させる場所になったと考えられている。
 上記のような特殊な場所に成立してきた植物群落は近年、自然現象の変化および人為的な影響により急速に変わりつつある。特に人為的な影響は大きく、特殊な植物群落や固有種が極端に減少してしまった。そのような変化の実態を報告し、かつ現在どのように植生の保護および保全を行っているかを、これまでの成果をもとに述べる。また、地方自治体および地元団体の活動とそれによるアポイ岳の将来性についても述べる。