生態学と社会科学の接点

企画者:巌佐 庸(九大理生物)・佐竹暁子(EAWAG、スイス)

生態系を理解しようとするとそれに大きな影響を与えつつある人間の意思決定、経済/社会学的決定を無視することはできない。またそのような人間 活動もまた生態系の状態に対応してダイナミックに変化する。現在人の社会 学的な決定のダイナミックスと森林や湖沼などの生態系とのダイナミックスをカップルしたシステムの研究が盛んにすすめられるようになってきた。それはDIVERSITAS のプランをみても、また地球研のプロジェクトをみてもわかるように、世界的な生態学の研究動向である。

第2には生態系管理/保全の応用生態学分野において、かつてのように禁漁区の設定といったやり方での管理はうまくいかず、地元の人々の参加と協力を要請する形の管理が成功するということが明らかになってきた第3に、協力行動の進化に関する研究により、人間には、評判や噂という社会的情報をもちいて他の動物にはない機構によって協力を維持するメカニズムがはたらいていることがあきらかになった。人をもちいたゲームの実験によって、人の行動を決める上ではかつて考えられたような経済的利得だけでなく、社会的側面や心理的側面が重要であることがわかってきた。それをどのように組み込むかは生態系管理の問題でも重要になる。

これらは生態学が,動物行動学や生態系学など異なるいくつかの領域において社会科学と接近しつつあることを示している。本シンポジウムでは、生態学と社会科学(心理学を含む)との間の接点についてはじめてとりあげ、議論を行う。