野生動物と共存するための生態学ーイノシシ被害を考える

企画者:江口和洋(九州大学),仲谷 淳(中央農研センター)

概要:近年増加する森林や農作地への鳥獣類被害の対策は,有害鳥獣駆除や防護柵の設置など現場での対処に限られ,鳥獣害発生の構造的側面を理解した,総合的な被害軽減策を講じるまでには至っていません.

 鳥獣害が生じる背景として,里山の荒廃,耕作放棄地の増加,農業形態の変化などが関わっていることが指摘されています.しかし,このような社会的諸問題がどのように関わっているかは,必ずしも明確ではありません.動物の特性だけでなく,地域住民や行政の事情などの社会的背景は,防除対策を考える際に重要です.また,農林業人口や農山村構造の将来的変遷は,政策決定を左右すします.このような諸問題を避けては鳥獣害への効果的な対処はできないと考えます.

 そこで,本シンポジウムでは,鳥獣害への戦略基盤形成を目指し,以下の視点で鳥獣害問題を考えます.

1)被害の特性 どのような地域に被害が生じるか

2)動物の特性を考慮した被害軽減戦術

3)農山村構造の変遷