企画者:湯本貴和(総合地球環境学研究所),小路 敦(九州沖縄農業研究センター)
概要:
かつて日本の全国土面積の1割以上を占めていた半自然草原は、高度経 済成長期以降急速に減少し、多くの草原性生物が絶滅の危機に瀕している。 阿蘇に代表されるような半自然草原の成立時期や過程については不明な点が多く、植生史研究の分野では、最終氷 期終了後の約1万年前〜6000年前にかけて微粒炭が多く検出され、この時期 に火事が多く起こっていたことが明らかになりつつある。このような火事と、日本の半自然草原の起源とが深くか かわっている可能性も指摘されている。
一方、阿蘇地域においても、畜産の担い手不足等によって草原の維持・管 理が困難になってきており、多くの草原性生物が絶滅の危機に瀕している。 このような状況のもと、自然再生推進法に基づいて「阿蘇草原再生協議会」が設立され、草原再生に向けた各種取 り組みが開始されている。
本シンポジウムでは、半自然草原に特徴的な生物相の成立と維持に、人間 がどうかかわってきたのかを考えるとともに、これまでの阿蘇、中国・四国 地方などでの草原再生の事例を紹介し、かつて「草原国」でもあったわが国における今後の保全・再生のあり方 について、問題を投げかけたい。