Bambooはなぜ一斉開花するのか?〜熱帯から温帯へのクローナル特性と開花更新習性の進化を探る

企画者:蒔田明史 (秋田県立大学生物資源科学部)

概要:長寿命一回繁殖性で、しかも一斉開花するというタケササ類の開花習性はどのようにして進化してきたのだろうか。一口に一斉開花といっても、その開花習性は熱帯と温帯ではかなり異なり,温帯の方が,開花の同調性が高く,開花周期は長いとされている。 では,なぜ温帯と熱帯とで開花習性が異なるのか?そこには,単に気候条件の違いだけでなく,クローナル特性の違いによる個体の成長様式や個体群構造の違いが関係しているはずである。タケササ類は熱帯起源で温帯に拡がってきた植物であると考えられている。熱帯のタケは仮軸タイプ型の地下茎をもち叢生するのに対し、温帯では水平に広がる地下茎をもつ。すなわち、“株立ち型”から“水平展開型”への進化が開花習性の変化を伴ってきたのではないかと考えられる。

ここで、問題になるのは、個体群内のクローン構造と開花結実期における遺伝子交流の実態である。そもそも、クローナル成長によって排他的な群落を維持できるタケササがなぜ開花しなければならないのか?この疑問に対し、分子生態学的手法の導入により,一斉開花に伴う遺伝的多様性やクローン構造の変化を明らかにすることによって答えが出せる可能性がある。

本シンポジウムでは、開花に関するレビューに、熱帯・温帯の双方で蓄積しつつあるクローン構造や開花更新を巡る最新の事例報告を交えて、Bambooが一斉開花することの意味を考えてみたい。このことは、一斉開花性やクローナル特性の進化に関しても示唆を与えるものとなろう。