企画者:藤田卓(九州大学大学院理学研究科), 川上和人(森林総合研究所), 加藤英寿(首都大学東京理工学研究科)
概要:
南硫黄島は小笠原諸島の固有種の種分化の初期過程を解明する上で重要な島であるとともに、有史以来人類の永住記録がなく原生の自然が残る貴重な島である。南硫黄島における地質・生物相とその起源を明らかにするために、25年ぶりに総合調査が行われた。本調査の結果、新種および新産の確認、オガサワラオオコウモリやアカガシラカラスバトなどの絶滅危惧種の確認、絶滅種とされていた種の再発見(タマゴナリエリマキガイ)などの成果が得られた。また、クマネズミなどの侵略的外来種が確認されず、人為がおよぶ前の貴重な生態系が残されていることがわかった。本シンポジウムではこれらの調査結果と前回の調査結果を比較し,その間に生じた変化についても考察する。一方、本調査では1種も外来種を持ち込まない、持ち帰らないという原則を守るために、徹底した外来種対策を行った(検疫ルームの設置、荷物の冷凍・乾燥処理、排泄物の持ち帰り等)。調査前後で検疫を行った結果、外来生物を防ぐ上で見過ごしやすい点や課題が明らかになった。これらの結果から、人為が及んでいない地域への調査にあたって配慮すべき点についても紹介する。