概要: 動物は環境の変化に応じて、学習による行動の変化や表現型可塑性 による形 態・生理の変化を可能にしている。動物が環境変化の刺激を感覚器 で受容する と、受容体からの情報がシグナル伝達経路を経て細胞内代謝を変え たり、二次 メッセンジャーを介して核内で遺伝子発現の調整がなされる。これ により、形 質発現の ON/OFFパターンを変えることで表現型可塑性が迅速 に可能となり、 可塑性の帰結が生理的変化の背景にある遺伝子のプロモーター領域 の遺伝的変 異への自然選択となって、表現型可塑性は進化する(West- Eberhardによる遺 伝的同化)。同様に、学習行動の場合も、行動の帰結として成功・ 報酬・失敗 などが脳-神経系の記憶にフィードバックされ、記憶の長期化 を経て(学習に よる行動的適応)、間接的に神経細胞の応答に対する遺伝的変異へ の自然選択 により、加速度的に進化を推進する(Baldwin効果)。この過 程で、どのよう な発生機構や生理機構あるいはゲノム構成が、柔軟な表現型改変に は必要なのかを探る。