| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-064
日本において,スキー場は,森林皆伐,重機による地剥ぎ,牧草類の播種などの大規模な人為干渉により造成される.一方,近年,スキー場の経営放棄が増加し,各地でスキー場放棄地がみられるようになった.しかし,生態系復元を行う場合に重要な放棄地における植生回復様式に関する情報はほとんどない.スキー場は造成時に非生物環境を大きく改変されるため,攪乱前の植生へ回復しない可能性もある.本研究では,スキー場放棄地の植生回復パターンを明らかにするため,564個の1m×1mプロットを用いて,過去1〜4年の間に放棄された北海道の7つのスキー場斜面の植生を調査した.
TWINSPANによる群集分類の結果,調査データはA)ススキ草地,B)牧草−ススキ草地,C)ヨシ草地,D)外来植物オオアワダチソウ草地,E)牧草−大型広葉草本草地,F)牧草優占草地,G)牧草−オオヨモギ草地,H)オオイタドリ草地,I)外来植物オオハンゴンソウ草地に分類された.植被率が低く,ススキの出現頻度の高いAではシラカンバや非在来のカラマツの木本の定着数が多かったが,他の群集型では牧草や大型広葉草本の被度が高いためほとんど木本の定着はなかった.各群集型と放棄年数の関係から,放棄直後のスキー場ではB,D,G,放棄年数の経過したスキー場ではAまたはHの割合が高い傾向がみられた.DCAによる序列化から,スキー場放棄地は放棄初期の植生である牧草地からススキ草地,オオアワダチソウ草地,ヨシ草地,あるいはオオイタドリ草地などが発達する傾向が示された.そして,放棄年数の経過と共にススキ草地とオオイタドリ草地へ移行すると予測された.木本定着の良好なススキ草地は森林へ回復する可能性が高いが,オオイタドリ草地は森林化せずに停滞する可能性が示唆された.