| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-091
1970年代の高度経済成長に伴い,かつての森林利用は停止し,現在全国的に里山の荒廃が問題となっている.長野県北部の飯山市周辺の里山においては,豪雪地帯に優占するブナ林の中に,ミズナラ・コナラ林を小面積で持続的に更新させてきた.しかし,その里山林放棄後の動態は明らかとなっていない.そこで本研究では,放棄後の里山の森林動態を探ることを目的とし,里山林におけるブナ・ミズナラ・コナラ実生の分布と生長を調べた.
調査は,長野県飯山市北部の柄山集落の里山林(約16ha)で行った.里山林内に,46ヶ所の実生区(1m×1m)を設置した.2007年6月から10月にかけ,調査区内のブナ・ミズナラ・コナラ実生(1年生)と,稚樹(H≦2m)の本数と高さを計測した.また,実生区の周りに10m×10mの調査区を設置し,現存する樹木(DBH≧5cm)の種同定・本数・胸高直径を測定した.
その結果,優占種と階層毎に,ブナ高木林・ブナ中木林・ミズナラ−コナラ亜高木林・ミズナラ−コナラ中木林に分類できた.ブナの実生は全ての植生タイプで存在していたが,稚樹はミズナラ−コナラ林に集中分布していた.一方,ミズナラとコナラの実生はミズナラ−コナラ林でのみ存在し,ブナ林ではほとんど存在しなかった.また,ブナ実生の生長量はブナ林よりもミズナラ−コナラ林で高かった.以上から,ミズナラとコナラの実生は耐陰性が低いため,林内ではブナより更新が起こりにくく,放棄されたミズナラ−コナラ林はブナ林となることが予想される.これらの結果から,放棄里山林における適切な保全管理方策を提言したい.