| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-174
昆虫の生息場所選択には,採餌活動が大きく関与している.特に捕食性昆虫の個体群サイズは,幼虫期の餌生物の質(種類)や量に依存しており,餌生物の発生などとの兼ね合いで生息(繁殖)地が制限されている.言い換えれば,餌動物の量や質は捕食性昆虫の生活史や個体数を決定する重要な要因である.そのため,絶滅の危機に瀕した捕食性昆虫が生息する環境を保全・復元するにあたり,幼虫期の餌資源と採餌生態に関する情報が不可欠となる.本研究では,昨今個体数の減少が著しい水生昆虫であるゲンゴロウとタガメの幼虫の採餌生態を,野外調査および室内飼育実験から解明しようとした.
この2種は溜池ではなく,水田を主な繁殖地としていることが知られており,水田に発生する無尾目の幼生(オタマジャクシ)やトンボ目の幼虫(ヤゴ)を主に捕食していることが予想される.野外において,幼虫の餌メニューを調べたところ,ゲンゴロウの幼虫はヤゴやオタマジャクシを捕食していた.一方,タガメの幼虫は主にオタマジャクシを捕食していた.次に,室内条件下でオタマジャクシとヤゴを与えたときの両種の成長率を比較したところ,ゲンゴロウ幼虫ではヤゴを与えた個体,タガメ幼虫ではオタマジャクシを与えた個体が他方を与えた個体よりも有意に成長率が増加した.水田と溜池で餌資源に関するすくい取りおよびコドラート調査を行ったところ,オタマジャクシおよびヤゴは溜池よりも水田において数多く確認された.以上から,溜池よりも餌資源が豊富な水田はゲンゴロウとタガメの重要な繁殖場所となることが示唆された.