| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-207
現在、外来種の問題は世界的にも大きくとりあげられており、特に生物多様性に大きな影響を与えている。これら外来種の侵入後の定着と分布拡大には様々なパターンが考えられる。ここでとりあげる2種のテントウムシ、フタモンテントウとハイイロテントウは、日本に侵入後一定の地域に生息している捕食性の外来テントウムシで、その侵入様式は対照的である。日本において大阪市南港地域に生息するフタモンテントウの餌は数種類のアブラムシとキジラミであり、これらの餌をめぐって特に在来種ナミテントウと競争関係にあった。同様のニッチを持つこれら2種の競争は発生時期や化性の違いによって緩和され、フタモンテントウが南港地域では捕食性テントウムシ類の優占種になったことがこれまでの調査から推察された。フタモンテントウは侵入地において在来の餌や植物を利用して生息している場合が多く、既存の食物連鎖において「割込型」の外来種と言える。これに対して現在、琉球諸島に広く生息しているハイイロテントウの主な餌は外来植物ギンネムに寄生する外来昆虫ギンネムキジラミである。ハイイロテントウはギンネムキジラミの定着後まもなく侵入しており、ギンネムキジラミが既に琉球諸島で広く繁茂していたギンネムに寄生して急速に分布拡大したことが、ハイイロテントウが容易に定着できた1つの要因と考えられた。ハイイロテントウはギンネムとギンネムキジラミによって新しく作られた空きニッチを効果的に利用した「便乗型」の外来種と言える。「便乗型」では餌や生息場所をめぐる在来種と競争は少なく、競争力の弱い外来種にも有利であるが、これに対して「割込型」の侵入は環境抵抗や種間競争が強いので種によっては個体数増加や分布拡大が難しいことが示唆された。