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自由集会 W15

生物間相互作用における形質変化の役割:その統合的な理解を目指して

企画者: 内海 俊介 (京大生態研), 岸田 治 (京大生態研)

従来、生物群集の相互作用ネットワークは「捕食−被食」関係に基づく食物網で捉えられてきた。しかし、近年の研究の蓄積によって、捕食者と被食者の関係はより複雑な様相を示すことが明らかになっている。その中核を担うのが、個体が示す形質の変化である。たとえば、捕食の危険にさらされた被食者は生存率を高めるために行動や形態を変化させるが、その結果しばしば、他種との相互作用が変わる。動物−植物の間では、植食者によって誘導された植物の構造的な変化や防御物質の増加が、植食者の密度を変化させるだけでなく、植物上に広がる動物群集の多様性にまで影響を及ぼすことが知られている。さらには、細菌やウイルスの世界でさえも形質変化を介した相互作用が存在するという。

しかし、これらの研究は、動物生態学、動植相互作用、微生物生態学など異なる分野で個別に進められてきたため、形質変化の実態やその生態学的な意義について、分野をまたぐ統一的な理解にはほど遠い。そこで本集会では、異なる分野を対象とする研究者にそれぞれの成果と問題点をレビューしてもらい、共通点や相異点を整理する。その上で、われわれが今後取り組むべき課題や研究の方向性を提案する。本集会では、演者を京大生態研センターの若手研究者を中心に構成し、論点を明確にするため事前に議論を重ねておいた。現状の総括と将来展望についてのわれわれの提案をもとに、参加者の皆さんと活発な議論を展開したい。

演者: 岸田治(京大生態研)、中村誠宏(北大苫小牧)、三木健(京大生態研)、内海俊介(京大生態研)

コメンテータ: 難波利幸(大阪府大)、近藤倫生(龍谷大)、大串隆之(京大生態研)

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