| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-01

市民参加による干潟底生動物の調査 2.種類の判別と結果の評価

*鈴木孝男(東北大院・生命科学),佐々木美貴(日本国際湿地保全連合)

干潟生態系の生物多様性を把握するためには、そこに生息する底生動物(ベントス)群集の調査が必須である。しかしながら、底生動物として干潟に出現する分類群は多岐に渡り、種の同定も簡単ではないことから、一般市民が気軽に調査に関わることができないのが実情である。

そこで、一般市民の方が参加でき、ある程度再現性があり、しかも将来の変化をモニタリングできる継続性のある干潟底生動物の調査手法を構築した(前回大会で発表)。

本講演では、この手法のために作成した「干潟底生動物調査ガイドブック〜仙台湾沿岸域編〜」を用いて、実際に調査経験者や未経験者に調査をしていただき、採集された底生動物の種の判別も各自が行うことで、調査手法の検証を行った結果について報告する。

種の班別については、同定のポイントとなる特徴が的確に分かるような写真やイラストが掲載された、現場で使えるガイドブックが不可欠であった。また、一般市民と経験者(専門家)の間で出現種数に差がでるのは、生息数が少なく希少な種類や、見つけるには経験が必要であるような種類(特殊な生息環境、近似種がいる、目立たないなど)がいるためであることが考えられた。

このような種の判別の難しさを考慮しながら、市民レベルで判別可能な種類、あるいは種群を選定して「ベントス調査表」を作成し、出現種をチェックしていく方法で、干潟の種多様性や底生動物の棲息場所としての重要性を評価していくことが可能であるように思われた。ただし、専門家の協力があれば、内容はさらに充実するであろう。


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