| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E1-02

草原性植物の種特性とRDB種指定傾向に基づく希少性との関係

*小柳知代(東大院),楠本良延(農環研),北川淑子(東大院),山本勝利(農環研),武内和彦(東大院)

生息地の分断化や劣化といった人間活動による影響は、種によって異なるため、影響を受けやすい種に共通する種特性を明らかにすることで、種組成の異なる他の地域にも応用可能な保全上の指針が得られるものと期待されている。そこで、本研究では、生育地の減少が著しい草原性の植物種に着目し、現在、全国各地でRDB種に指定されている草原性植物に共通する種特性およびその組み合わせを明らかにすることを目的とした。草原性植物の種特性としては、生活史や形態、繁殖戦略に関わる7つの種特性情報を用いた。解析では、種特性をもとに種を分類し、グループ間でのRDB種指定傾向の有意差を地域ごとに比較した。さらに、RDB種指定率を全国レベルと各地域レベルとで比較し、希少性の高い種特性の組み合わせが、半自然草地の減少傾向の異なる地域によって異なるかどうかを検証した。種特性に基づく分類の結果、草原性植物は、主に花期と植物高の違いに特徴付けられる種グループに分類され、全国レベルと一部の地域レベルで、グループ間でのRDB種指定傾向に有意な差が確認された。また、関東地方でのRDB種指定率は、全国レベルでの指定率と比べて有意に高かったのに対して、東北、中部、中国地方での指定率は有意に低い傾向となった。半自然草地の減少が著しい関東地方では、既に希少種に指定されている種であっても、放牧地などとして面的な半自然草地が残されている他の地域においては、未だ希少種として認識されていない傾向があることが明らかになった。また、こうした種は、花期や形態的特性において、共通する種特性の組み合わせをもっていたことから、今後、半自然草地に特徴的な植物相を保全していく上で、特に注目できる種だと考えられる。


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