| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E1-10

砂河床直線河道における環境修復工法が生息魚類に与える効果の良し悪し

佐川志朗(土研・自然共生セ),萱場祐一(土研・自然共生セ),青木繁幸(土研・自然共生セ),秋野淳一(共和コンクリート),宮下哲也(土研・自然共生セ)

河川改修による河道の直線化は河床材料および河道地形を短調化し,さらに改修河川が砂卓越河床である場合には,土砂移動・攪乱が激しいため,生物一次生産ひいては水生生物の群集多様性の低下に拍車をかける.本発表では,前述の環境を呈していた庄内川水系矢田川において施工した環境修復工法の効果について報告する.本事業はアダプティブマネージメント(AM)を導入している.

2007年の事前調査の結果,施工検討区間の横断河道形状は短調で平瀬を呈しており,水深および流速のレンジも小さく,特に右岸水辺の環境が短調であった.確認水生生物は13分類群,生息密度が1.6個体/m2であり,オイカワの当歳魚(20-40mm)が3個体/調査区間しか確認されなかった.以上を鑑み,右岸水辺域を対象として,水制工による瀬の保全,稚仔魚の生息場所となるワンドの造成,捨石工による間隙環境の創出を行った.

2008年の事後調査の結果,河道環境は多様になり,確認水生生物は23分類群,生息密度は9.3個体/m2となった.オイカワの当歳魚は176個体/調査区間が確認されるに至った.しかし一方で,特定外来生物のカダヤシの激増(4→687個体/20m2),ブルーギルおよびブラックバスの新規追入が認められた.物理環境および確認個体数データを用い,GLMMによる特定外来生物の生息モデルを構築した結果,この定着要因はワンド上流部の閉塞により完全止水域が出現したため(流速がなくなったため)と考えられた.以上を鑑み,特定外来生物を抑制すべく,掘削あるいは施設配置によるワンドへの流水環境(平水で10cm/sec程度)の創出施行を年度内に検討しており,AMの二回目の仮説検証調査を2010年に実施する予定である.


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