| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E1-11

工事現場に偶然加入したシオマネキ:生息決定要因の解明

*河井崇,大田直友(阿南高専・建設システム工)

徳島県阿南市大潟干潟は,漁港拡張工事中に全面埋め立てを目的として航路浚渫土及び建設工事残土(山土)による盛り土を行った結果,偶然創出された人工干潟である.しかしながら工事後10数年経過した現在,この工事現場に絶滅危惧種であるシオマネキが多数生息していることが確認された.詳細な分布調査の結果(PA1-208の講演参照),粘土シルトの細粒分が90%以上をしめる浚渫土投入区の地盤高が平均大潮干潮面から+1.0〜2.0mの高潮位域に集中して分布していることがわかった.一方で,70%以上が粗粒分からなる山土区内での生息は確認されなかった.そこで,工事現場内のシオマネキの分布要因,特に底質との関連性を明らかにするため,野外操作実験(底質入れ替え実験)を行った.2007年4月,浚渫土区に隣接した山土区に,幅2m長さ16m深さ0.5mの溝を10本海岸線と垂直方向に掘り,そのうち5本の溝には眼前の漁港内から採取した浚渫土を投入し(浚渫土区),残り5本には掘り返した山土(攪乱山土区)を再び埋め戻した.その後2年間,これら2種類の溝,及び対照区として何も処理を加えていない溝(現状山土区)において,シオマネキの加入量調査を行った.その結果,浚渫土区において他の2つの山土区と比較して圧倒的に多くの加入が確認された(浚渫土区4.0個体/m2,攪乱山土区0.7個体/m2,現状山土区0.03個体/m2).また,山土区内でも,底質の細粒分が30%を超える区画では若干数の生息(0.3〜1.8個体/m2)が確認され,底質中の細粒分の割合がシオマネキの分布を決定する主要要因であることが示唆された.また,地盤高についても,平均大潮干潮面から+1.5m付近で最高密度(6.0個体/m2)を記録し分布調査の結果と一致したことから,その重要性が裏付けられた.

本報告は,水産庁・水産基盤整備調査委託事業の成果の一部である.


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