| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) H1-02
森林には樹木個体間に被陰関係がある。被陰関係とは、樹冠の低い樹木個体が、より高い樹冠をもつ樹木個体によって、光資源の獲得を阻害されることである。和歌山の森林における237個体の樹木の樹高、樹冠サイズ、樹木位置から、すべての個体の間の被陰関係をもとめた。この個体間の被陰関係を描いたネットワークを構築し、その構造を解析することで、個体間の関係を調べた。樹木個体は、被陰されることで光資源を得にくくなるので負の影響を受ける。光資源の減少により光合成量が低下し、成長量が低減するためである。ある樹木個体が被陰により成長抑制をうけるならば、その樹木個体に被陰される樹木個体は間接的に正の効果を受けることになるだろう。このように、樹木間の被陰関係がどのように繋がっているかを調べることで、森林内の樹木個体間の間接効果を解析した。森林内の樹木個体は多数の樹木個体より被陰され、また多数の樹木個体を被陰しており、被陰ネットワークは複雑な構造をしている。この被陰ネットワークにおいては、すべての間接効果の経路を考慮しても、正の間接効果を与え、または受けている樹木個体のペアも存在する。被陰ネットワークにおける間接効果でのパターンを検出するため、帰無モデル解析をおこなった。現実の森林モデルと、ネットワーク構造をランダマイズした帰無モデルの比較を通じて、現実の森林における被陰ネットワークを特徴づける。