| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) H2-01
日本海をとりまく環日本海地域の冷温帯の沖積低地にはハルニレ林が分布する。このハルニレ林の群落分類体系をみると、日本列島の冷温帯ではハシドイ−ヤチダモ群集やハルニレ群集が、また朝鮮半島ではイッポンショウマ−ヤチダモ群集やタチクサボタン−ハルニレ群落が記載されている。極東ロシアの沿海州に分布するハルニレ林の組成構造解析はこれまで不充分であったが、今回はじめてオオハコベ−ハルニレ群集とオオカサスゲ−ヤチダモ群落を識別した。
上記群集・群落を総合常在度表にまとめ検討した結果、各地域のクラス域に分布の限定された3つの亜群団が識別された。すなわち、日本列島のブナクラス域のハルニレ林はハシドイ亜群団に、朝鮮半島のモンゴリナラクラス域のそれはチョウセンバイカウツギ亜群団に、極東ロシア沿海州のモンゴリナラクラス域のそれはウスババイカウツギ亜群団にまとめられた。この3亜群団はともにハルニレ群団に属するが、その上位の分類体系では、日本の群団は既存のオーダを降格させたシオジ−ハルニレ亜オーダーに、朝鮮半島と極東ロシアの群団は新設したオヒョウオーダーに位置づけられた。
さらに、群団以上の上級単位の植生地理学的属性評価を行った結果、ハルニレ群団とオヒョウオーダーの分布領域はともに日本列島の冷温帯・ブナクラス域と朝鮮半島および極東ロシアの冷温帯・モンゴリナラクラス域に跨がっていることから、前者はクラス外群団として、後者はクラス外オーダーであり、かつ上記の2つのクラス域をまとめたブナ−ナラクラス群の分布領域に含まれるクラス群内オーダーとして評価した。