| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) H2-04
かつて大湿地帯であった越後平野は, 戦後の乾田化によって日本有数の稲作地帯となった. 一方で, 洪水によって維持されていた河川と農地の連続性は分断された. 本研究では, 乾田化から半世紀が経過した越後平野における現氾濫原(河川堤外地)と旧氾濫原(農地)の生態的連続性を, 出現植物の類似性から解析する.
調査対象とした堤外地は, 農地と自然植生が混在する信濃川の自然堤防帯(20km)と, 堤外地の利用がない早出川の扇状地(5km)である. 対象地内の全ての景観(ヤナギ林, 野焼き群落など)に複数の20-50mのベルトを設置し, 連続する1m×1mの調査枠に分割した. 休耕田は約2000km2の農地から70枚を抽出し, 1枚あたり1本のベルト(20m)を設置して同様に分割した. 設置したベルトの総数は, 信濃川54本(調査枠1500個), 早出川56本(1120個), 休耕田70本(1400個)である. 全ての調査枠において, 通年で出現した植物の種名を記録した.
出現した植物種数は信濃川248種, 早出川384種, 休耕田204種, 計489種であった. 3つのサイトに共通して出現した植物種数は100種であり, 以下のように大別された; 1) ヨシなどイネ科草本, 2)タデ科など一年草, 3) アブラナ科など越年草, 4) 外来種. サイト間の植物相の類似性を解析するためにJaccardの共通係数を算出した結果, 全ての組み合わせで同様の値が得られた. 各植物種の出現頻度を用いたPCAによるベルトの序列化では, 信濃川と休耕田のベルトが局所的に配置される一方, 早出川のベルトは景観要素ごとに配置が異なり, 扇状地の多様な群落構造が示された. 以上の結果をもとに, 沖積平野における在来植物種の保全について考察する.