| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-02

近赤外デジタルカメラによる植生フェノロジー観察について

*小熊宏之, 中路達郎, 井手玲子(国立環境研究所), 日浦勉(北海道大学)

植生からの太陽光の反射光を分光解析することにより、葉内色素への吸収や葉面積指数(LAI)を反映した情報が得られる。この性質を利用したNDVI(Normalyzed Difference Vegetation Index)やGRVI (Green-red ratio Vegetation index)などの分光植生指標値は植物の葉の展開や落葉といったフェノロジー応答を評価するうえで有効な指標である。本研究では、可視(赤、緑)と近赤外に感度を持つ3バンドのデジタルカメラを用いて植生表面の分光反射画像を自動で連続撮影する小型観測システムを開発した。本システムの大きな特徴は植生を撮影する視野内の一部に日射成分を一部写しこむことで照射光と撮影対象の分光成分を同時に評価することを可能とし、この両者の比を演算し、対象画像の画素値(緑、赤、近赤外)を分光反射率として変換し解析できる点にある。従来のウェブカメラなどのカラー画像では、光の強度や撮影時刻による光の質による影響を受けやすく、カラーバランスの崩れ等のカメラの経年劣化の補正が困難であるが、本システムでは、反射率画像に変換し、さらに可視と近赤外の反射率をもとにNDVIを算出することで、植物葉の季節応答との関係を個体スケールで議論することが可能になるほか、人工衛星・航空機などのリモートセンシングデータとの併用による広域化も期待される。本講演ではおもに、JaLTERの森林観測サイト(苫小牧・落葉広葉樹林、富士・落葉針葉樹林)において試験的に撮影した画像をもとに、植物個体・植物種ごとのNDVI解析事例について紹介し、今後の研究展開について議論したい。


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