| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) I1-09
マングローブ植物は嫌気的かつ高塩分な生育土壌に対応するため, 呼吸根や通気組織を発達させていることで知られている. 地上部から取り込まれた酸素は体内の通気組織を通じて地下部へ送られる. 送られた酸素は根の呼吸によって消費されるが, その一部は根の表面を介して土壌中へ漏出する. 根から漏出した酸素は, 嫌気的な土壌中でモザイク状に好気的環境を形成し, 微生物環境を変える要因となる.
マングローブ植物の根が土壌微生物活動へ及ぼす影響について明らかにすることは, マングローブ植物の生育機構の解明や, 生態系における役割の解明において重要である. 本研究では, マングローブ生態系を構成する主要な3種(オヒルギ, ヤエヤマヒルギ, ヒルギダマシ)について, 根からの酸素漏出速度を測定することを第一の目的とした.
マングローブ植物の胎生種子を沖縄県石垣市川平の浦田原川河口域で採集し, 温室内で半水耕栽培した. 栽培2年目の各個体について, 根からの酸素漏出速度を測定した.
3種共, 根からの酸素漏出速度には個体差がみられたが, いずれの個体も, 暗条件下に比べて明条件下の方が高い酸素漏出速度を示した. 光合成による体内酸素濃度の上昇, もしくは光に対する何らかの応答で通気組織の抵抗が低下することが, 地下部への酸素輸送および根からの酸素漏出速度に正の影響を及ぼしていると考えた. 又, オヒルギとヤエヤマヒルギは, 空気の入り口とされる「皮目」の発達した幹の重量や, 通気組織の発達した木化根の重量と, 根からの酸素漏出速度に正の関係が認められた. 酸素漏出速度を見積もるには, 樹齢に加え, 個体毎の各器官への分配を測定する必要があると考えた.