| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-10

マテバシイ属シリブカガシ塊根の生態的特性

*米田健(鹿児島大・農),水永博己(静岡大・農),木下裕子(鹿児島大・農),今村能子(鹿児島大・農),岩壁千智(鹿児島大・農),舘野隆之輔(鹿児島大・農)

マテバシイ属シリブカガシ稚樹の多くが塊根を形成していることを見出した.その生態機能について,自然生育地での観測と2〜3の栽培実験から得た結果について報告する.野外観測は,熊本県天草郡松島町の受蝕性未熟土壌地に分布する稚樹を対象とした.1個体につく塊根数および平均塊根重量は地際直径との間に相対成長関係を示したが,立地環境によりその相対成長係数は異なった.根全体に占める塊根重量比は個体サイズおよび立地により異なり,地際直径が1cm未満の個体でとくに高い比率をもつ個体が存在した.1cm未満の個体の塊根重量比が葉面積比(SLS)との間に負の相関が存在したことから,乾燥・貧栄養条件下で塊根重量比が高くなることが示唆された.稚樹ステージでの塊根が乾燥および撹乱に対する耐性に果たす役割を,栽培実験により同属のマテバシイ との比較を通じて評価した.摘葉と断幹処理によりストレスを与えた3年生稚樹を明所・暗所の光条件を変えて7ヶ月栽培した.明条件下では土壌条件にかかわらずシリブカガシの再生力が高く,暗条件では土壌が土である場合はマテバシイの方が,砂では両種に大差なかった.栽培した7ヶ月間の塊根体積の変化は,明条件では無処理個体では増大したが,処理個体では土+摘葉処理以外では減少した.断幹処理では初期の60%程度まで減少した.暗条件では無処理個体も含め前個体において塊根体積が初期値の50%程度まで減少した.すなわち,本実験結果はシリブカガシが塊根の水分・養分を活用して,撹乱頻度が高い明+乾燥条件下ではマテバシイにくらべ高い再生力を持つことを示している.塊根を持つ1年生稚樹を材料に,塊根除去と無除去個体間での再正力および無潅水条件での生存率の比較実験結果についても報告したい.


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