| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I2-02

高CO2下におけるダイズ群落のLAIの決定要因としての窒素動態と個葉の炭素収支

*及川真平(京工繊大・生物資源フィールド),岡田益己(岩大・農・農学生命),彦坂幸毅(東北大・院・生命科学),廣瀬忠樹(東京農大・国際食料・国際農業開発)

個体が持つ葉の量とその維持期間(葉寿命)は、光の獲得、光合成、水利用そして生産の主要な決定要因である。個体あたりの葉面積・葉重は、富栄養条件下ではCO2施肥によって増加するが、貧栄養条件下ではCO2を施肥しても増加しない。葉寿命は、富栄養条件下ではCO2施肥の影響を受けないが、貧栄養条件下ではCO2施肥によって長くなる。CO2施肥によって葉寿命が長くなるのは、光合成の量子収率の増加によって光合成の光補償点が低下するためかもしれない。光補償点が低下すると、植物の成長に伴い葉同士の相互被陰が大きくなり、葉群内の葉の受光量が低下しても、その葉はより長い期間正の光合成を維持できる。では、CO2施肥による葉寿命の増加が富栄養条件下で消えるのはなぜだろうか。我々は、CO2と栄養塩(ここでは窒素)の相互作用による植物群落の葉面積の増加が、群落内の葉の受光量の低下を促進し、葉の老化すなわち窒素の回収と光合成速度の低下を促進するという仮説を検証した。材料としてダイズ(Glycine max)を用いた。根粒着生種は多くの窒素を入手できるために葉面積のCO2促進が非着生種よりも大きい。そこで、高CO2下における群落内の光環境の低下が大きく、葉の老化の促進が顕著であることが期待される。過去に行われたマメ科植物と非マメ科植物の比較では、CO2施肥による葉の老化の応答に一貫性はなかった。これは、根粒の有無以外の要因(例えば生活型や生活史の違いなど)が比較を複雑にしたためかもしれない。本研究では、より直接的な比較を行うために根粒着生品種(cv Enrei)とその非着生突然変異体(cv En1282)を生育させ、CO2が葉面積と個葉の日炭素収支、葉寿命に及ぼす影響を調べた。


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