| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) I2-08
広葉樹二次林には低木樹種から高木樹種まで多様な樹木が生育しており、それらが同所的に生存することにより特有の空間構造を形成する。しかし、低木樹種は生活史の全てを林床面で過ごすのに対し、高木樹種では稚樹は林床面で過ごすが成木になると林冠部に葉群を展開する。林冠部に位置する葉群は林床面に比べて明るい環境であるが、根からの水分の輸送距離が長く、水分ストレスを受けやすい。このように樹種による生活型の違いは葉群が受ける環境の変異をもたらし、葉群はそれぞれの環境に適応した形態をもつと考えられる。この点に注目して京都府南部の広葉樹二次林に生育する常緑広葉樹7種のシュートの形態と通導機能を測定し、樹種によってどのように異なるか、またそれが樹木の生活史とどのように関係しているか調べた。
イヌツゲやアセビといった低木樹種は小さなシュートをもつが、ヤブツバキやアラカシ、サカキといった高木樹種は大きなシュートをもつことが分かった。また、水分通導の面からも低木・亜高木シュートは高木シュートに比べて通導性が低かった。
低木シュートの木部圧ポテンシャルは低く、水分ストレスを受けていることが示唆された。また、高木シュートに比べて枝断面積/葉面積は大きく、水分ストレスに対して蒸散面積を減らすシュート形態がみられた。一方で高木種の稚樹は成木に比べて枝断面積/葉面積が小さく、受光面積を広げて林床の暗い環境に適応する形態がみられた。
このように、通導性が低くサイズも小さなシュートは水分ストレスを受けやすいため、通水距離が短い低木層で展開するのに適していて、通導性が高くサイズも大きなシュートは水分ストレスを受けにくく、通水距離が長い高木層で展開するのに適していると考えられる。