| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K1-05

ダムからの排砂が砂州上の樹木の成長促進に与える影響

*坂本健太郎(建設技術研究所), 川嶋崇之,小田切宗一郎,清憲三,浅枝隆(埼玉大院・理工)

ダムからの排砂は通常の洪水よりも多い土砂が流下し、砂州の冠水部分では多くの土砂が堆積する。堆積土砂が長期的に残存する場合は、砂州の樹林化に関与すると考えられる。このため、排砂が実施されている黒部川で、過去の放流実績から冠水した砂州(以下St.1)、冠水しなかった砂州(以下St.2)で現地調査を行い、堆積土砂と樹木の成長促進の関係を実証的に考察した。

調査は2007年11月、2008年6月(排砂前)、および7月(排砂直後)に実施した。2007年調査ではSt.1、St.2で優占するカワヤナギSalix gilgiana、アキグミElaeagnus umbellataを対象に、樹高、胸高直径および推定樹齢から樹木の成長度合を比較した。その結果、カワヤナギはSt.1で成長度合が大きいが、アキグミはSt.1、St.2で違いは見られなかった。

2008年の排砂直後のSt.1では砂州高の高い一部を除き、広範囲にシルト主体の細粒土砂が堆積し植物体の一部である有機物も含まれていた。ここで栄養塩に着目すると、2008年排砂前の砂州土壌のNP比はSt.1が約1でN律速であったが、排砂後はT-Pはほとんど増加しなかったものの、T-Nと含水率は増加しNP比が約3となりN律速が解消される傾向となった。さらに堆積土砂に含まれる有機物のNP比は約16と砂州土壌より高いことを考慮すれば、毎年の排砂時の冠水で栄養塩が供給され、カワヤナギが進出、成長しやすい環境となり、St.1のカワヤナギがSt.2よりも成長度合が大きくなったと考えられた。一方、比較的砂州内部に生息するアキグミは、冠水しにくいためN不足と考えられるが窒素固定によりこれを補い、結果的にアキグミの成長度合に差は見られなかったものと考えられた。


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