| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) K1-08
河川法面はコンクリートで覆われることが多かったが、最近では近自然工法の採用などによって、河川法面を土の構造とする生物相の回復の試みが行われるようになった。造成直後の裸地に速やかに密な植生が成立することにより侵食防止が期待される。しかしながら、工事後の河川法面にはセイタカアワダチソウなどの外来植物が侵入・優占しやすいことが知られており、外来植物を繁茂させない工法や維持管理法の開発が求められている。
そこで、2001年の冬に宮崎県千野川に造成された新河道の河道植生について、年一回刈り取りが外来植物種の抑制においてどの程度の効果があるかを明らかにすることを目的とした、固定コドラートによる植生調査を5年間行った。調査区は施工後より、3つのブロックの法面の斜面位置で上部、中間部、水辺を「上」、「中」、「下」と分類し、それぞれの斜面位置毎に5列ずつ、合計45個のコドラートを設けた。
45個のコドラートのうち27個について(ブロック毎に9個)は2002年から2006年の4年間、7月下旬にエンジン草刈機により地際から約5cmの部分を刈り取った。刈取り前の7月中旬と、刈取り後の11月には植生調査を行った。
その結果、セイタカアワダチソウやチガヤなどでは、刈取り区と放置区との間に極めて大きな違いが存在した。すなわち、セイタカアワダチソウ等の外来植物は、放置区では被度が極めて高く推移したのに対し、刈取り区では低く推移した。特に「中」と「下」での刈取りによる減少が著しい。一方、チガヤはセイタカアワダチソウとは大きく異なり、むしろ刈取りによって被度が著しく増加した。
刈取りに対する耐性はセイタカアワダチソウもチガヤも高いことが知られているが、チガヤの方が刈取り条件下では有利となることが明らかである。このように刈取りはチガヤなどの在来植物種を助長し外来植物種との競合に有利に働いたと考えられる。