| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K1-11

都市内残存湿地の植生モニタリングと市民参加型管理

相澤章仁(千葉大院・自然科学),田代順孝(千葉大院・園芸学)

近年人々の生活圏の中に存在する自然地を市民参加型で管理をする事例が増えてきているが、その管理法などに対する生態的な立場からのバックアップは十分とは言えない。本研究では市民参加型管理がなされている根木内歴史公園(千葉県松戸市)の湿地部において行った植生モニタリングの調査結果から、管理(草刈り)の主な対象であるヨシ・オギの存在と、生態系の価値の指標である種多様性との関係を明らかにすることを目的として研究を行った。

調査は2008年6月に行い、対象地全体を5m×10mのメッシュで区切り、各メッシュの中心に置いた50cm×50cmのコドラート内に存在する総ての種と優占種を記録した。また、環境要因として各地点の水深を測定した。各地点の水深と種数の相関解析を行ったところ、水深が深くなるほど種数が減少することが確認された(p<0.05)。オギ・ヨシの有無によるT検定ではヨシが種数に対して負の関係、オギが正の関係であることがわかったが(p<0.05)、常時水位の高い南側の点を除き、北側のみのデータで同じ解析を行うと、ヨシは種数とは無関係となり、オギは正の関係のままであった。このことから、種数に対してヨシが負の影響を与えたのは水位が高く、他種が生育しにくい南側で優占していたからであると考えられる。

オギの分布域で種数が多くなったが、オギはヨシよりも比高の高い場所を生育適地としていることが知られている。今後目標となる植生などを設定していく際にこのことを考慮し、オギレベルのやや乾いた湿地植生を目指すのか、種数は少なくてもより湿潤な湿地植生を目指すのかを検討していく必要がある。また、より湿潤な環境を好む種の発現のためには埋土種子を調べることも有効であると考えられる。


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