| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K1-12

変動環境下の土地利用:私有か共有か?

山村則男(地球研)

伝統的なモンゴルの遊牧では、土地は共有で、各家族が家畜を伴って草の豊富な場所を求めて移動する。このような遊牧は、資源の時空間変動が大きいときに有利とされている。具体的には、(1) 草の豊富な場所を選んで移動することによって、家畜をより太らせより増やすことができる。(2) 移動することによって、特定の場所の過剰利用による土地の劣化をふせぐことができる。

モデル1:解析的に解けるモデルで、(1) の効果を評価する。

1家族が単位1の土地を占有しているとして、多雨の年、少雨の年が1/2の確立で独立にきて、それぞれの年の草量をfG, fBとする。家畜バイオマスの増加率が草量に比例するとすれば、年平均増加率は、相乗平均のW1 = fG1/2fB1/2となる。一方、単位2の土地を2家族で共有する場合、fG, fBとなる確率が空間的にも独立だとすれば、移動のコストcを考慮して、家畜の年平均増加率は、

W2 = (fG -c)1/4((fG+fB)/2-c)1/2(fB-c)1/4となるので、W2W1より大きくなる条件を調べた。

単位nの土地をn家族で共有する場合、fB /fG=rとすると、コストを無視すれば、Wn/W1rnの関数としてもとまり、 nの効果、つまり、変動の程度rが与えられたとき、どのくらいの面積の土地を共有にすべきかが分かる。

モデル2:数値計算で(1)と(2)の効果を評価する。

草量の増加率がfG, fBの2値をとるランダム変数として、草量 と家畜量 の年次変動のダイナミクスを書くことができる。ここで、草の利用過多が起こったときの翌年の草量は少なくなるとしている。この式を共有のサイズnごとに計算することによって、私有と共有の相対的有利性を評価することができる。


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