| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K2-01

炭素・リンコストのバランス:ミジンコ類の閾値餌密度に対する餌のC:P比の影響

*岩渕翼, 占部城太郎(東北大・生命)

閾値餌密度(Threshold Food Concentration: TFC)は、個体の成長に必要な最小餌密度であり、消費型競争の優劣を指標する。しかし、このTFCが餌の質、とくにC:P比などの元素比にどのような影響を受けるのかは、よく分かっていない。そこで本研究では、体サイズやリン含量の異なる7種のミジンコを用いて個体飼育実験を行い、ミジンコ各種のTFCが藻類のC:P比によってどのように変化するのかを調べた。その結果、いずれの種でもリン含量の少ない藻類を与えた個体のTFCは、リン含量の多い藻類を与えた個体よりも有意に高くなることが明らかとなった。しかし、餌のリン含量の変化に伴うTFCの変化の大きさはミジンコ種によって大きく異なっていた。一方、餌量が一定で餌のリン含量が変化しても多くのミジンコ種で濾水速度は変化しなかった。したがって、リン含量の低い餌を食べたときのTFCの上昇は、補償摂餌(Compensatory Feeding)による炭素コストの増加だけでは説明出来ない。むしろ、リン含量の低い餌を食べたときのミジンコ各種のTFCの増加は、与えられた餌条件下でのリン獲得量やリンのコスト(代謝消失量)に依存しているのかも知れない。発表では、個体のリン含量やリンのコストにおける種間差の生態学的意味について議論する。


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