| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) L1-01

近縁種の競争排除をもたらすものはなにか:花粉干渉の効き方

*西田隆義(京大農),西田佐知子(名大博),内貴章世(大阪自然史博),高倉耕一(大阪市環境研),松本崇(京大人環)

ごく近縁な生物は、分布、生息場所あるいは資源利用などが分かれている場合が多い。従来、このような「棲み分け」は共通の資源をめぐる種間競争によって説明されてきた。しかし、食植性の昆虫など資源競争がごく弱い生物でも「棲み分け」が普遍的にみられることを考えると、資源競争説は疑わしい。われわれは、代替仮説として繁殖干渉説を提唱してきた。繁殖干渉とは、近縁種間に潜在的に存在する繁殖をめぐる種間のハラスメントであり、動物では異種オスによる行動的ハラスメント、植物では異種花粉による繁殖妨害(花粉干渉)として機能していると考えている。すなわち、繁殖干渉は概念的には交雑も含むがそれよりもはるかに広い概念で、全く交雑しない場合を含む。今回の講演では、異なる繁殖の過程、すなわち結実、発芽、および雑種個体の結実という過程で生じる花粉干渉が、同じように棲み分けをもたらすことを、外来および在来雑草を対象に述べる。

研究の対象は、セイヨウタンポポ(外来)とカンサイタンポポ(在来)、オオオナモミ(外来)とイガオナモミ(外来)、ミツバフウロ(在来)とゲンノショウコ(在来?)の3つの系である。セイヨウタンポポの花粉は隣接するカンサイタンポポの結実率を一方的に低下させていた。オオオナモミの花粉は隣接するイガオナモミの結実率にはわずかしか影響しなかったが、結実した種子の形は異常になり、発芽率は急減した。これに対して、ミツバフウロでは、ゲンノショウコの花粉は結実率、種子の形状ともに影響しなかったが、雑種個体の結実率はきわめて低くなっていた。そしていずれの場合にも、2種間には空間的な棲み分けがみられた。すなわち、花粉干渉の効果が生じる過程の如何にかかわらず、花粉干渉は棲み分けをもたらしうることが示唆された。


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