| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) L1-09
京都府から大阪平野を流れる淀川の「ワンド」では、イシガイ科二枚貝が高密度に生息する。イシガイ類には魚類に寄生するグロキディウム幼生期があり、寄生に適した魚類の存在なしにイシガイ類の個体群維持はありえない。しかし近年、淀川では外来魚の割合が増大し、在来魚の密度が著しく低下しており、イシガイ類の繁殖に負の影響を及ぼしていると推定される。演者らが2007年に行った淀川・城北ワンドでの野外調査の結果、イシガイ(Unio douglasiae nipponensis)の幼生の半数(39〜67%)はブルーギルとオオクチバスに寄生するものの、そのほぼ全数が魚体上で死亡していた(2008年生態学会発表)。
そこで、ブルーギルとオオクチバスにおけるイシガイの宿主適合性を確かめるため、室内での感染実験を行った。イシガイに幼生を放出させた水に一定時間魚を入れて感染させ、その後個別に飼育して魚から脱落する未変態・変態幼生を毎日(13日間)カウントした。
その結果、ブルーギルとオオクチバスに寄生した幼生の90%が5日以内に脱落してしまい、最終的に変態できたのは約0.5%であった。対照のトウヨシノボリ(イシガイの宿主の一種)では60%以上の幼生が変態に成功した。
従って、イシガイにとってブルーギルとオオクチバスは宿主適合性がほとんどなく、これが野外で起きている状況の主要因と考えられる。魚類がイシガイ類の寄生を阻む生理的メカニズムとして、生得的な防御機構と獲得免疫が知られる。この実験ではイシガイが生息しない水域で採集したブルーギルとオオクチバスを用いたので、両種がイシガイの寄生を阻むのは獲得免疫ではなく、生得的な防御機構だと考えられる。