| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) L2-01

熱帯ヒース林における優占種3種の実生の形態的特性

*宮本和樹(森林総研四国),Reuben Nilus(サバ森林研究センター)

熱帯のポドゾル上に成立する熱帯ヒース林構成樹種の撹乱に対する適応と更新特性を明らかにするため,マレーシア,サバ州に分布する熱帯ヒース林の優占種3種(Dacrydium pectinatum, Hopea pentanervia, Tristaniopsis obovata)を対象に伐採後の萌芽能力と実生の形態的特性を比較した。伐採による萌芽再生の観察の結果,Hopeaは切株から旺盛に萌芽していたのに対し,Tristaniopsisではほとんど萌芽がみられなかった。Tristaniopsisは樹冠部が健全な状態では明るい場所で萌芽がみられることから,萌芽には貯蔵物質による依存度が低いことが考えられた。Dacrydiumについては伐採試験を実施していないが,試験地周辺で最近伐採された個体を観察したところ個体サイズに関わらず萌芽がまったくみられなかった。3種の実生を堀取って根の形態的特性を比較したところ,Dacrydiumは主根や直径2mm以上の粗根の量が多いことがわかった。一方,Tristaniopsisは直径2mm以下の細根の量が多く,SRL(乾重あたりの根長)が大きいなど,土壌中の養分を探索,効率よく吸収するのに適した形態となっていることが明らかとなった。Hopeaの根の形態はDacrydiumTristaniopsisの中間的性質を示した。以上のようにこれら熱帯ヒース林の優占種3種は,萌芽能力や実生定着時の養分吸収などの点でそれぞれ異なる特性を有することで,熱帯ヒース林特有の貧栄養環境に適応していることが示唆された。


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