| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) M1-01
進化の最終状態のあり方は突然変異にはよらず自然淘汰だけによって決まるとするのが標準的な理論である。しかし突然変異体が元のタイプと形質が大きく違いうる場合には、これが成り立たないことを見いだした。
考えるモデルは縄張りの所有者と侵入者との間の2者間非対称ゲームで、見張る確率xと侵入確率yについてそれぞれの0から1の間の分布がどのように時間変化するかを考える。(1)突然変異がないときには中立安定で初期分布によって異なる変動をいつまでも続ける。(2)突然変異体が元のものと形質が近いときには、安定なリミットサイクルがあり、確率分布は振動をし続ける。(3)突然変異が0と1の間を一様分布をするという大きな分散を持つ場合には、突然変異率が非常に小さくても安定な定常分布を示す。これらの違いは突然変異率が10^(-6)といったごく小さな場合でも成り立つ。
2者間非対称ゲームの他のタイプのゲームも調べたが、突然変異体が非常に幅広い分布を持つ場合には元のタイプに近い場合とは進化の最終状態の様相は定性的に異なることが分かった。これはAdaptive Dynamicsなどでこれまで議論されてきた結論について疑問を呈するものである。