| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) M1-02
血縁者間に生まれた子は近交弱勢によって生存率が低下するため、近親交配は一般的には不利であるとされ、多くの動植物で実際に近親交配回避が見られる。その一方で、鳥類をはじめいくつかの動物種では、中程度の血縁関係にある個体を配偶相手として積極的に好むという現象も観察されており、最近の実験ではヒトにおいても同様のことが起こっていることが示唆されている。これに対しては、近交弱勢に加えて、近親交配によってできた子に対する高い血縁度からくる利益、あるいは、あまりに血縁の遠すぎるものと子を生したときに適応度が低下する「outbreeding depression」が起こっているために、中程度の血縁を持つものと配偶するのが良いという説明がある。
つがいを形成する動物の場合には、子の養育など配偶者間での協力が配偶者の選択に影響し、血縁者間ではそれがより複雑になる可能性がある。本研究では血縁個体間の協力と配偶という2つの問題を組み合わせたゲームを解析し、雌雄間での協力がある時にどの程度の血縁関係を持つ個体が配偶者として好まれるべきかを包括適応度から調べた。また、個体ベースモデルを用いた解析も行い、中程度の血縁者との配偶がどのような条件で進化するかを調べた。これらの結果をもとに雌雄間での近親交配回避の程度の差についても考察する。