| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) M1-06
葉寿命の多様さを理解するために、樹木が葉をどれだけ維持し落葉させるかは、一個体あたり出来るだけ多くの炭素獲得量(光合成)を実現できるように決定されるという仮定から、いくつかの研究が行われてきた(Kikuzawa(1991),Takada et al(2006))。葉を展開してからの時間をt(年)、また葉を作るためのコストをC、純光合成生産量をf(t)とし、(-C+f(t))を炭素獲得量とすると、それらの研究では、葉寿命の最適戦略t*(年)は、(-C+f(t))/tが最大の時であるとされており、単位時間あたりの炭素獲得量が最大である戦略を最適戦略として採用している。これは葉一枚の炭素獲得量が最大になる前に、葉を落とし新しく付け替えたほうが将来的な炭素獲得量が大きくなるという考えに基づいている。一年の大半が光合成に適した期間である場合は、次々と葉の付け替えを行うことが出来るので、それが最適戦略だと思われる。しかし、一年の間に光合成に適さない期間がある場合にも、葉寿命あたりの炭素獲得量を最大とする戦略が将来的な樹木の炭素獲得量を最大にするのだろうか?
本研究では、一年を光合成好適期間と光合成不適期間に分けた単純な仮定のもとで、2つのモデル(葉量投資モデル、貯蔵器官投資モデル)を用いて解析した結果を報告する。前者のモデルは、光合成で得たbenefitで出来るだけ多く葉を展開させるものであり、後者は、葉量を維持し、benefitを貯め込んで種子生産にまわすものである。その結果、前者では、葉の推移行列の最大固有値が最大となるように葉寿命が決まることがわかった。また後者では、(-C+f(t))/(寿命年数)が最大の時が葉寿命の最適戦略であることがわかった。さらに、それらの最適戦略から求められた最適葉寿命と、先行研究によって求められた最適葉寿命について比較検討を行う。