| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) M2-02
ヤマトシロアリでは、孵化した幼虫は1・2齢ではカーストについて未分化であり、3齢になるとニンフかワーカーに分化する。ニンフとワーカーは、巣内に生殖虫がいなくなったとき、脱皮をしてそれぞれニンフ型・ワーカー型生殖虫に分化し、繁殖を行う。最近、これらの生殖虫を用いた交配実験から、生まれた幼虫は、両親の由来するカーストと自身の性により明確に異なる分離比で両カーストに分化し、遺伝的要因がカースト決定に強く関わっていることが明らかになった。しかし、遺伝的に雌ニンフになる予定の卵を、生殖虫と共に飼育すると、生まれた幼虫の約1/4がワーカーに分化する。そこで、本研究では、ヤマトシロアリにおけるカースト(ニンフ/ワーカー)決定に、コロニー内の生殖虫がどのように影響を及ぼしているかを調べるため、一次生殖虫と雌ニンフになる遺伝子型の卵を用いて、(1)〜(3)の実験を行った。
(1)ニンフ型生殖虫に単為生殖を行わせ、雌ニンフになる遺伝子型の卵を得た。この卵を一次生殖虫とワーカーからなるコロニーに育てさせた。(2)2重の金網で仕切った飼育容器の片側に一次生殖虫とワーカーからなるコロニーを入れ、もう片側にワーカーのみを入れ、ワーカーのみのコロニーに単為生殖卵を育てさせた。(3)ワーカーのみのコロニーに単為生殖卵を育てさせた。卵から生まれた幼虫は、3齢になるまで飼育し、それらがどのカーストに分化したかを調べた。その結果、(1)では約10%、(2)では約9%の幼虫がワーカーに分化していた。また、(3)では、ほとんど全ての幼虫がニンフに分化した。以上の結果から、一次生殖虫は、3齢でのカースト決定に、揮発性の物質を用いて影響を与えていることが考えられる。