| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) M2-07

単体性サンゴの双方向性転換

*酒井一彦(琉球大・熱生研),Y. Loya(テルアビブ大・動物)

イシサンゴ目では、約90%の種が同時的雌雄同体である。我々はイシサンゴ目の雌雄異体種が性転換を行うことを初めて観察し、さらに双方向の性転換があることも明らかとした。対象としたのはクサビライシ科の単体性サンゴ、トゲクサビライシ(Ctenactis echinata)とマルクサビライシ(Fungia repanda)である。これら2種のサンゴは年1回配偶子形成を行い、毎年7月と8月の満月の約1週間後の深夜に、放卵放性する。両種とも、生活史初期に固着性から非固着性に移行するため、成体は全て非固着性であるため、サンゴを壊すことなくサンゴ礁から実験水槽に移動させることができる。我々は2004年から沖縄島北部の瀬底島北の離礁で、対象種を含むクサビライシ科サンゴにタグをつけ、個体識別を始めた。2004年、06年、07年に、予想される放卵法精日の1週間以前にサンゴ礁から対象種を無作為に採集し、琉球大学瀬底実験所の流海水水槽で飼育し、放卵法精が予測される日には夕刻にサンゴを1個体ずつ止水水槽に移し、個体が放出する配偶子から性を決定した。観察終了後、全ての個体を採集したサンゴ礁に戻した。個体が死亡した場合は、タグ付きの骨格が現場に残るため、死骨格から年間の生存率を推定し、各個体の湿重量と体長も測定し、年間の成長も追跡した。

マルクサビライシは雄性先熟の性転換が、トゲクサビライシでは基本的には雄性先熟の性転換であるが、中間のサイズで双方向の性転換があることが確認された。マルクサビライシはトゲクサビライシよりも相対的に早く性転換を行い、成長率が低く、死亡率が高かった。また両種で性比が雄に偏っていた。これらは性配分理論に一致すると考えられる。トゲクサビライシでなぜ性転換が起こるかについては、いくつかの仮説を現在野外実験で検証中である。


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