| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) N1-11

オオタカの採食動物の季節、性別、個体差

*大堀 聰(早大自然環境),内田 博(比企野生生物研)

オオタカの雌は雄よりも約350g重く、大きい。このような性的二型を示すのは、雌雄による餌資源の競合を避ける利点があると考えられている。本研究では、調査個体が捕獲した採食動物を記録し、利用する種や性別、個体、季節による違いを比較した。解析に用いたのは、2004年から2008年までの5年間に調査地で捕獲し、ラジオテレメトリーによる追跡調査を行ったオオタカ雄6羽、雌4羽である。

調査は早稲田大学本庄キャンパス大久保山とその周辺で行った。大久保山の斜面はアカマツが混交するコナラ二次林で被われており、造成された谷戸部には校舎とグラウンドがある。周囲は水田や畑が広がり、中小の河川や利根川が近くを流れている。2004年にはキャンパス内に新幹線本庄早稲田駅が開業し、駅前の都市再生事業などが行われているため、採食環境は大きく変化しつつある。 解析に使用した6羽の雄は、ハト類を中心に、ムクドリ、ヒヨドリなどの中型鳥類、スズメを主とする小鳥類、ネズミ、ノウサギなどの小型哺乳類を捕食した。4羽の雌は、小型の鳥類を捕食することもあったが、おもにハト類やカモ類、カラス類、サギ類など雄よりも大型の鳥類を捕食した。

採食動物の種類は、季節により変化した。雄は非繁殖期にはハト類やムクドリ大の鳥類、繁殖期にはスズメ大やムクドリ大の小〜中型の鳥類をよく捕えた。雌は非繁殖期にはハト類やカモ類を捕食した。繁殖期には雛が大きくなるまで巣を離れないため雌は狩りを行わないが、それ以降はカモ類やカラス大の鳥類を捕食した。 一定の期間同じ採食動物が選択されるのは、個体数の多さや捕まえやすさ、個体の好みなどが関係していると考えられた。また、雌雄により採食動物の大きさが異なるのは、捕獲努力や採食時間の違いが関係している可能性が示唆された。


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