| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) N1-12

リッチなメスは性転換しない?ーツマジロモンガラの性転換の数理モデルー

*山口幸(奈良女大院・人間文化), 関さと子(WDB株式会社), 高橋智(奈良女大院・人間文化)

ツマジロモンガラは、メスからオスへ性転換する魚である。しかし、伝統的なサイズアドバンテージモデルが予測するような最大メスの性転換は見られていない。魚の配偶システムとメスの産卵数のデータから、栄養状態の悪いメスは性転換することで繁殖成功をあげることができるが、栄養状態の良いメスは性転換しない方がよいと予測される。栄養状態が性転換に影響する例は、魚類では報告がない。栄養状態と性転換の関係を説明するために、なわばりの質を考慮した数理モデルを作成した。モデルによれば、メスの死亡率によらず、質の良いなわばりをもつメスは性転換しない。そうでないメスは、なわばりの質が悪いほど、小さいサイズで性転換することが分かった。これは、実際の現象をよく説明している。なわばりの質が悪いところでは、メスの死亡率が高まるほど、性転換が早まる。これは死亡しにくいオスに早くなるほうが良いと解釈できる。また、メスの死亡率が大きいところでは、死亡率が増えるにつれて、性転換個体が減る。これは、メスが貴重になるので、性転換せずにメスのままでいることが有利であるからと考えられる。


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