| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) N2-03

左利きホモはどのように消えていくか ― 魚類左右性多型の不和合性の進化

井上由美子,岡本里花,川崎友子 (奈良女),堀道雄 (京大),*高橋智 (奈良女)

魚類の左右性多型の遺伝様式はスケールイーター等の親子のサンプルのデータから,左利き優性のメンデル遺伝で優性ホモを欠いていると考えられている.条件のよいときに卵の孵化率が 100% に近いことから,この現象は優性ホモの致死性では説明できない.昨年の本学会で,左利きの卵と精子が結びつかないとする遺伝的不和合性によりこの現象が説明できること,および逆の利きの餌を捕食する交差捕食による左右性の振動により (グループ産卵の場合に) 不和合性が有利となり進化することを報告した.ペア産卵では不和合性は不利となるが,不完全な不和合性は増加し中間の頻度に落ち着く.

1捕食者-1餌系で交差捕食により左右性の振動が生じるものに対し,不和合性が全く存在しない状態から,不和合性の程度を少しずつ変化させ,不和合性の強弱いずれが有利かをシミュレーションにより調べた.グループ産卵のモデルでは不和合性の強いものが有利となり,捕食者,餌ともに不和合性が完全となり,左利きホモは存在しない状態に落ち着くこととなる.ペア産卵のモデルでは,不和合性が弱い (強い) 場合にはより強い (弱い) 不和合性が有利となり中間的な強さの不和合性が有利となった.この場合,少数の左利きホモが存在することとなる.


日本生態学会