| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-050

光飽和しない光−光合成曲線

小山耕平・菊沢喜八郎(石川県立大)

葉に当たる光の強さと、光合成速度との関係をグラフにした光−光合成曲線は、光合成能力の高い葉でもPAR(=PPFD) 1500 - 2000 micro-mol m-2 s-1 (夏の直射光強度)で飽和すると一般に考えられている。よって、夏の快晴日では群落上部の葉は直射光で光飽和し、暗い群落下部の葉でのみ光律速が起こると一般に理解されている。しかし、我々はキクイモ(ヒマワリ属草本)とハンノキ(落葉高木)の個体上部の葉はPAR 2000 micro-mol m-2 s-1で光飽和しない事を発見した。温帯では、これ以上の光強度は通常起こらない。これらの葉の光合成能力は、なぜ最大限利用されていないのだろうか?

Farquhar(1989)の個葉光合成最適化モデルの個体への拡張(Terashima et al. 2005) は、「植物1個体の光合成速度が最大化されるような各葉の光合成能力の分布は、個体上に存在する全ての光合成経路が等しい割合で光制限を受けるような分布である」と予測する。つまり、どの光合成経路も他の経路より稼働率の悪いものが無い状態が最適である。そこで我々は、「夏の直射光でも、個体上部の葉は光飽和せず、光環境の悪い下部の葉と同程度に光律速を受けた状態が最適である。」と考えた。

キクイモ1個体上の様々な葉の光−光合成曲線を測定により求め、夏の快晴日に葉上の自然光強度を測定して日平均光合成速度を計算すると、自然光条件下での各葉の日平均光合成速度を、その葉の最大光合成速度(光−光合成曲線の漸近線の高さ)で割った値は、個体上部と下部の葉でほぼ同じだった。この結果は、上記の仮説を支持する。


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