| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-053

三つのCO2噴出地由来のオオバコにおける成長と光合成のCO2応答

*市川琢己(東北大・理),彦坂幸毅(東北大・院・生命)

大気CO2濃度は急激に上昇しており、それに植物がどのように応答するのかが重要な課題となっている。植物の環境応答は1)短期的応答、2)順化、3)適応の三つに分けられ、短期的応答や順化は詳細に研究されてきたが、数世代以上の長い時間を要する適応に関しては不明な点が多い。この問題へのアプローチとして、天然CO2噴出地(CO2 spring)の利用が注目されている。ここでは、長期間にわたり高CO2濃度が保たれており、高CO2濃度環境に適応した植物が生息している可能性がある。山形県丹生鉱泉のCO2噴出地周辺のオオバコを用いた共通圃場実験では、通常CO2域由来に比べて高CO2域由来の個体で相対成長速度の増加、地下部/地上部比の低下、光合成速度の低下、気孔コンダクタンスの低下が見られた。これらの普遍性を確かめるため、我々はさらに青森県湯ノ川・山形県朝日鉱泉・富山県林道の三ヶ所のCO2噴出地周辺のオオバコについて解析を行なった。

三ヶ所のCO2噴出地周辺の高CO2域とそこから少し離れた通常CO2域に生育しているオオバコから回収した種子を発芽させ、2つの異なるCO2濃度に設定したOpen Top Chamber(OTC)内で育成した。オオバコは砂耕栽培し、成長解析や光合成測定を行なった。

その結果、高・通常CO2域由来の個体間のいくつかの形質で噴出地間共通の差異が見られた。湯ノ川のオオバコでは高CO2域由来のオオバコで気孔コンダクタンスが低くなる傾向が、朝日のオオバコでも通常CO2濃度で育成した場合に同様の傾向が見られた。また、湯ノ川と林道の高CO2域由来のオオバコでも地下部/地上部比が低くなる傾向が見られた。

以上から、気孔コンダクタンスの低下と地下部/地上部比の低下は高CO2濃度環境に対する比較的普遍的な適応であることが示唆される。


日本生態学会