| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-059
湛水土壌は一般に低酸素状態であり、このような環境に生育する大型水生植物は、地下部への酸素供給機能を発達させると共に、地下部に供給された酸素を効率的に利用する必要がある。地下部に供給された酸素の多くは根の呼吸に使われる。呼吸により得られたエネルギーは、栄養塩獲得や根のバイオマス維持、根の成長に消費される。これらの酸素(エネルギー)消費要素のうち、栄養塩獲得のために消費される酸素量は、獲得する窒素形態の違いにより大きく変動する。多くの植物はNH4+とNO3−の両方を利用できるが、NH4+を利用した場合、吸収・同化にかかる酸素量はNO3−を利用した場合の約1/4となる。そのため、地上部からの給気に依存する大型水生植物にとって、NH4+の利用は根の酸素消費において有利となることが予想される。しかし、NH4+は体内に蓄積すると有害となるため、酸素を比較的容易に供給する機能を持つことができれば、NO3−を選択的に利用する場合も考えられる。つまり、地下部への酸素供給機能に差がある種が似たような低酸素環境に生育している場合、窒素吸収形態に違いがあると考えられる。
そこで本研究は、窒素吸収形態の違いや酸素条件の違いが根の酸素消費や成長へ与える影響を調べ、低酸素耐性とは何かを評価することを目的とした。
異なる酸素供給機能をもつヨシとマコモを用い、酸素飽和条件と低酸素条件の2条件で、それぞれ窒素養分源がNH4+のみとNO3−のみの処理区を設け水耕栽培を行った。そして定期的に根・シュートの呼吸速度、乾燥重量、窒素含有量を測定した。
NH4+処理区では、両種とも両酸素条件で良好な生育を示したが、NO3−処理区では成長が悪く、特にマコモは低酸素条件で窒素含有量、呼吸速度が低かった。マコモにとって低酸素状態でNO3−を利用することは根の酸素消費の点でより不利となることが示唆された。