| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-066
オーストラリア西部では、農耕地を造成した際の大規模な森林伐採によって地表近くに塩分が集積し問題になってきた。この塩害の緩和および二酸化炭素の吸収源として、塩害地での植林が試みられている。植林には乾燥や塩分ストレスに対して耐性を持つ精英樹を用いることが有効と考えられる。しかし、精英樹の選抜には明確な基準がなく、基礎となる生理的な情報が求められていた。本研究では塩害地の植林木について、夏期の乾燥と土壌の高い塩分濃度への応答を明らかにすることを目的とした。
材料として、Eucalyptus globulusの高成長性系統(HG1)および塩耐性(ST1)あるいは乾燥耐性(ST2)を持つと期待される系統を使用した。植林に適した良好地と塩害地に植栽された苗を使用して、個体の成長と葉の水分特性の季節変化を3年間半継続して測定した。
その結果、まず良好地では耐性系統の成長は高成長性系統と比べて小さかった。日中の葉の水ポテンシャルは夏期に低下し、耐性系統でより低かった。一方、P-V曲線が示す葉の水分特性は季節変化や系統間の違いは明確でなかった。このことから耐性系統は夏期の乾燥に敏感に反応するが、葉の水分特性は調節していないと考えられる。塩害地では、すべての系統で成長は低下した。日中の葉の水ポテンシャルは夏期に低下したが、良好地より低下は小さいことが分かった。葉の水分特性は良好地と同様であった。したがって、塩害地での成長の低下の原因は意外にも水ストレスと断定できない可能性が高い。