| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-076
乾燥地域において、多年生植物の多くは地下水を利用して生育している。そのため、地下水位の変動は、根系の成長反応の変化を通して、植物の水利用および成長に影響することが予想される。前大会では、異なる高さの水位処理に関わらず、ウラジロハコヤナギ(Populus alba L.)苗木の根長と総現存量との間に正の相関が認められたことを発表した。このことは、水位変化に対するウラジロハコヤナギ根系の反応が植物体の成長に大きく関わったことを示唆する。そこで、本大会では、水位変動下における植物体の成長量の変化に対する根系反応の寄与の可能性について発表する。
2005年7〜10月に鳥取大学乾燥地研究センター内ビニールハウスにおいて、ポット(60L)に植栽した1年生のウラジロハコヤナギ苗木を異なる水位で90日間生育させ、30日間隔で葉面積、根長、及び各器官の現存量を測定した。この測定より得られた結果から解析した成長パラメータを用いて、各成長要因間における相関関係を調べた。
苗木の相対成長速度は、葉面積および純同化速度の両要因と高い正の相関があった。葉面積の変化は、葉の形態よりも葉への現存量配分との相関関係が強かった。また、葉と根への現存量配分との間には負の相関が認められた。既報により、水位が低いほど、根への現存量配分が増加することが示されている。したがって、低水位条件下では、根への現存量配分の減少に伴い葉への配分が増加し、その結果、植物体の総現存量の低下を引き起こした可能性がある。一方、水位の低下に伴って細根量の割合が低下することも示されており、根への現存量配分と細根量の割合との間には高い負の相関が認められた。これらの要因はトレード・オフの関係にあるようで、低水位条件下において細根の成長が低下すると、苗木は根への現存量の配分を高めることで水資源獲得を増加させたようだ。