| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-083
ダケカンバは北海道にも広く分布する落葉樹である。温度は開葉などのフェノロジーだけでなく、光合成活性や水・養分の吸収にも影響を与えると考えられる。そこで、芽や葉などの周囲の地上部の気温と、根周囲の地下部の温度が、開葉、葉や根の生長、光合成活性にどのような影響を与えるのかを調べるために、ダケカンバの1年生実生を開葉が始まる前から、人工気象室内において水耕栽培により生育させた。自然条件下では、気温と地温の変化はほぼ連動していると考えられるが、個体内のある部位の温度がその部位の成長を通して、他の部位の成長にどのような影響をもたらすのかを調べるために、芽(葉)と根の周囲の温度を個別に制御する実験を行った。札幌の4月中旬(低温)、5月中旬(常温)の気温に準じて気温を設定し、各気温に対して、根の周囲の水温を低温および常温に設定した。開葉や葉面積の増加は地上部の気温、新しい根の成長は地下部の温度に大きく依存した。開葉や葉面積の増加には芽や葉の周囲の気温がある程度高いことが必要であるが、根の周囲の温度が低いと葉の生長は抑えられた。また、各設定気温に準じた葉温で測定した飽和光下での光合成活性は、地下部の温度が低いと低くなる傾向があり、蒸散速度も低くなった。水の膜透過性にはアクアポリンが関与しているが、同じ地上部の温度では地下部の温度が高いほど根の原形質膜に存在するアクアポリン量が多かった。根の周囲の温度は水などの輸送などに影響を与え、葉の生長や光合成生産にも影響を与えていると考えられる。