| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-088
マングローブ林には環境傾度に応じた帯状構造とよばれる明瞭な植生の分布パターンがしばしば見られる。河川流域では、上流から下流に向かう河川方向の傾度と、沿岸から内陸に向かう河川に沿って平行に変化する傾度の2つの大きな環境傾度がある。これらの環境傾度は、帯水時間、塩分濃度、河川水流・潮流などの要因により複合的に形成される。本研究では、マングローブ林を構成する樹木の窒素利用様式がこれらの環境傾度に対してどのように変化するかを検討するために、生葉と落葉の窒素含有量を測定した。植物の窒素利用様式は土壌中の窒素利用可能量以外にも様々要因の影響を受ける。今回は、窒素利用効率や成長速度などの種による違いが、2つの環境傾度に応じた種の分布パターンと対応しているか否かに着目した。
西表島仲良川流域に分布するマングローブ林の上流と下流にプロットを設置し、植生構造、リターフォール量、リターフォール中の窒素濃度、生葉の窒素濃度の沿岸から内陸に向かっての変化を各プロットで測定した。
オヒルギは全域に分布するが、上流ほど、また内陸ほど優占度は大きくなった。ヤエヤマヒルギは主に下流に分布し、沿岸部で優占度が大きかった。直径成長量は、両種とも優占度が大きい所で大きかった。落葉量は、両種とも優占度の大きい所で多くなったが、バイオマスあたりの落葉量はオヒルギの方が多かった。オヒルギ落葉の窒素濃度は下流で低く、上流では内陸ほど低い傾向があった。ヤエヤマヒルギの落葉の窒素濃度はオヒルギよりも高かったが、環境傾度に沿った変化は明瞭ではなかった。これらの傾向は2つの環境傾度上に見られる様々な環境要因の変化に対する2種の資源利用様式の変化と対応していた。