| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-090

15Nトレーサー実験による生育中のイネのアミノ酸挙動の解析

*一宮孝博,中下留美子,鈴木彌生子(首都大院理工),佐々木由佳(山大農),伊永隆史(首都大院理工)

窒素は、アミノ酸やタンパク質、核酸などに含まれ、生物にとって重要な元素の1つであり、植物においては、リン酸およびカリウムと共に肥料の三要素とされる。窒素動態は、生物体内の窒素代謝メカニズムの解明や、農作物の生産性向上だけではなく、富栄養化や硝酸汚染対策などを通じた環境保全など、多様な目的で研究されている。近年、窒素動態を解明するツールの1つとして、窒素安定同位体比(δ15N)が用いられている。窒素安定同位体比は、植物の窒素吸収および同化に関する研究などに対してしばしば利用されているが、分析試料の全窒素(bulk)についての分析が多く、分子レベルにおける窒素の分析をした例は少ない。分子レベルの窒素安定同位体比分析は、bulk分析以上に、植物内の窒素挙動や土壌中における窒素画分の変化の追跡に有用であると期待される。本研究では、イネ(コメ)のbulkとアミノ酸の窒素安定同位体比を測定し、これらの比較を行った。

本研究にあたり、まず、同一地域で有機栽培および慣行栽培されたコメのbulkとアミノ酸の窒素安定同位体比の測定を行った。グルタミン酸(Glu)およびフェニルアラニン(Phe)は、bulkと同様の傾向を示し、有機栽培が慣行栽培よりも高い値であった。一般的に、有機栽培による窒素源は、慣行栽培の窒素源と比べて高い窒素安定同位体比をもつことが知られており、コメの窒素安定同位体比は、bulkだけではなく、グルタミン酸およびフェニルアラニンも窒素源の窒素安定同位体比の違いを反映していることが明らかになった。15Nラベル肥料を施肥し、生育させたイネについても、bulkとアミノ酸の窒素安定同位体の測定を行い、その挙動について報告する。


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