| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-091

熊野山地からの養分動態が熊野灘の内湾、岩礁海岸のウラニン濃度に及ぼす影響

表 寿一*(近大高専・建設システム工),蔵本将(近大高専・建設システム工),

近年、森林・河川から供給される物質が沿岸域の生産高に影響を及ぼしているといわれている。その原因として、集水域の森林が自然林から人工林に、河川の護岸がコンクリ−トを用いた工法の問題などが指摘されており、その環境変遷が栄養塩や有機物供給の減少に繋がっていると推測されている。その結果、魚のえさとなりえる食物連鎖の底辺である植物プランクトンの基礎生産に影響を及ぼしているという。今回調査した熊野地域は周りがほとんどが杉、ヒノキに覆われた人工林であるために、この森林環境から湾内への物質供給が、海洋の一次生産者である植物プランクトンの生産性にどれだけ影響するかを明らかにすることを目的とした。調査地域は熊野灘の内湾と岩礁海岸の二箇所である。測定期間は2008年8月から2009年2月までの7ヶ月間で毎月一回、朝9時から夕方5時までの毎時間測定した。測定器は(株)アムコのACLW-CMPを使用した。本来植物プランクトンの基礎生産をはかるのにクロロフィルaを測定しますが、それと相関関係にあるウラニンを測定した。測定方法はIn-Vivo蛍光光度計で青い光(460nm付近)で励起して、放射される赤い光(680nm付近)で計測した。また、植物プランクトンの基礎生産を制御する栄養素として、森林・河川から供給されるNO3-N,NO2-N,NH4-N,PO4-P,ならびにFeなどの栄養塩類を測定した。特に、鉄は、海においての生物生産を制限しているといわれることから調査項目に入れた。ウラニン濃度は、測定期間が夏から冬にかけての半年であったために全般に低かった。外洋に繋がる岩礁海岸より内湾のほうが高く、9月に最大5μg/lが測定された。また、水質に関しては、河川のNO3-N,NH4-N,PO4-P濃度はかなりの高い値が示された。Feに関しては、0.5mg/l以下と低かった。


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